双極キャリアの歩き方

双極性障害でも仕事やプライベートで色んなことをしてみたい!体調を崩してもめげずに道なき道を進みます。

ここでキャリアは終わったの?

パワハラがきっかけで長く休職したときに、リワークに通っていた。当時の私はうつ状態と言われていて、一緒に参加した人はほぼ全員がうつ病/うつ状態の会社員だった。私はそのリワークに1年も通い、その間にいろいろな人が出入りしていくのを見届けた。パワハラの上司の元に復職しなければならず、なかなか心身の準備ができなかったのだ。

 

精神保健福祉士の先生の指導は私の回復にとても役に立ったと今でも思う。一つ印象的だったのは「皆さんはもう休職前と同じ働き方はできません。仕事以外に自分にとって大切なことはなにか、よく見つめ直してみましょう」といった趣旨の言葉だった。

 

当時の私には「もうキャリアアップは諦めてください。仕事優先の生き方を変えましょう」と言っているように聞こえて何だかもやもやした。大企業の若手サラリーマンが「昇進に執着するのはやめました。これからは家庭優先で生きていきます」などと言ってリワークを卒業していくのをみると、「えっ、えっ、本当にそんなに簡単に価値観変わっちゃったの?」と驚いた。

 

私に上昇志向はないけれど、仕事で新しいことをするのは好きだった。後に離婚をしたくらいなので優先したい家庭はなかった。そして、いくら一生懸命スローライフに憧れても運命の出会い(一生を捧げたいと思えるパンに出会ったんです、とか)などなく、ヨガもアロマも鍼灸も一向に私の中途覚醒を改善させず、「収入は激減しましたが心の満足度はアップ」という境地にたどり着くための何かを見出すことができなかった。「会社員は荷が重すぎるから派遣社員かパートになりたい」と主治医に泣きついていたけれど、退職に踏み切ることができなかった。

 

主治医の「あなたはパワハラを受けた被害者で悪くないのだから自分から辞める必要はない。あなたが辞めるなら、ほかのパワハラで休職した人もみんな退職しないといけないの?」という言葉が私の心には響いた。なんとなく使命を背負うと励みになるのだ。最終的には「こうなったらトラウマ療法だ、あたって砕けろ」と半ばやけ気味にパワハラ上司の元に復職した。

 

その職場で地味に働きながら回復に励み、社内公募で部署異動をし、さらに組織変更で異動した。その間何度も体調を崩し、休職し、双極性障害と診断された。でもこの4年の間に昇進して休職前より責任の重い仕事をしている。「この状態で部下なんて絶対持てません、病状が悪化します」と抵抗はしたけれど、思いがけず部下はかわいくて私のモチベーションになり、一般職で働くよりラクな面もあり、やってみないとわからないことだらけだな、と気づいた。

 

振り返ると「皆さんはもう休職前と同じ働き方はできません。仕事以外に自分にとって大切なことはなにか、よく見つめ直してみましょう」というのは「皆さんはもう長時間残業などの無茶な働き方をすることはできません。自分のプライオリティを考え直しましょう」ということだったのだろうと思う。確かに心身の健康が最優先だということは身に染みた。でも、過労せずに仕事の経験を積み重ね、キャリアを構築していくことを否定することはないと思う。たとえコントロールの難しい双極性障害であっても。

 

もちろん私も今後体調がさらに悪化して今のような働き方はできなくなるかもしれない。会社が私を手放すかもしれない。それでも、今の経験が自分のメモリから完全消去されるわけではない(記憶力は低下しているけれど、それでも)。精神疾患=もう簡単な仕事しかできないと決まったわけではない。もしも「もうキャリアのことなんて考えちゃいけないのかな。未練があるな」ともやもやし続けるのであれば、今いるところから何かちょっとずつ、仕事の経験を広げる方法を模索してもいいんじゃないかなと思う。